サンドペーパー

ライター・編集者 高木さおりの思考と生活の記録

【展示】石原海『重力の光』shiseido art egg

銀座の資生堂ギャラリーで開催中の石原海さんの展示『重力の光』へ行ってきました。

当ギャラリーが行う『shiseido art egg』という新進アーティストの公募プログラムで選ばれた展示です。

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展示の内容は、映像作品とインスタレーション

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この映像作品が、素晴らしかった!本当に、観に行けてよかったです。

 

映像作品を演じるのは、北九州の生活困窮者支援NPO法人「抱撲(ほうぼく)」の教会に集う人々。基本的なストーリーはキリスト教の最後の晩餐から受難、十字架、そして復活までの内容で、彼ら、彼女らはそれぞれの役を演じているわけです。しかし、その合間に差し込まれるのが、役から離れた一人ひとりの、個人的な自分語り。その2つのテーマが交差して展開していきます。

 

ホームレスだった、極道から抜け出した、幼少期から厳しい家庭環境におかれて人を信じられなかった、それぞれが個人的なエピソードを語る表情は、過去のどうにもならない苦しみと自分なりに折り合いをつけられた、折り合いつけつつある人のそれだったように思います。だって、苦しみの渦中にあったらああいう風に淡々と語ることはできないと私は思うから。

 

苦しみって、その大きさは大なり小なり、きっと誰もが持っているはず。だからこそ、誰が観たとしてもどこか自分ごとのように思える作品なのではないかなと思いました。

本当に、生産性とか役に立つかどうかとか、そういう価値観では人間そのものを測れるわけがない。そういう視点に陥った時点で他人ならず、自分自身の首を締めることになるんだろう、と。

 

抱撲と、代表の奥田知志さんのことは以前から知っていました。

奥田さんのインタビューでは以下の動画が心にのこって、何度か観返しています。

www.youtube.com

上記のなかで心にのこった言葉が、「傷の社会化」。

一人ひとりが抱える苦しみを、自己責任や家族の責任など閉じた空間に押し込まず、いかに世間の傷として共有していくかという視点。

フェミニズムのいう『個人的なことは政治的なこと』という言葉もこれに共通するはず。この視点を忘れずにいたいと、観るたびに思います。

 

生活困窮者支援に関しては、以前、

東京でホームレスに住宅支援を行うNPO法人

「つくろい東京ファンド」の稲葉代表に取材しました。

 よかったらお時間のあるときに読んでいただけるとうれしいです!

 

石原海さんの展示は、10/10(日)まで!

気になる方は、ぜひぜひ銀座の資生堂ギャラリーまで行ってみてください。